苛々する。
全くもって不甲斐ない苛立ちに僕―小田桐秀利は此処最近悩まされている。
断言するが苛々の対象は僕自身にではない。だが風紀を乱す連中にでもなく、多分原因は分かってはいる。多分と言うのもそうなる過程が分からないだけで、決して僕自身の考えが及ばない訳ではないと思いたい。
事は僕が二年に進級した時から始まった。
生徒会の人事も当然一年の生徒から有志を募り、生徒会に新たなメンバーが加わる事となった。そのメンバーの中で一番頼り無さそうなのが彼女―伏見千尋だった。彼女が生徒会会計に配属された訳なのだが、どうにも根はしっかりはしているがどこか抜けており、周りに迷惑を掛け謝る姿が度々見られた。どこか皆に対して遠慮しているらしく、誰かが話しかける度に戸惑うのだ。僕は彼女のその態度が少々気になった。話しかける度に怯えられてもこちらが困るしかない上に、他の生徒よりも扱いが難しい彼女に僕は苛ついているのは明白だった。
だが、何故か放ってはおけなかった。同じ生徒会に所属しているよしみもあるが、それ以外にも理解し難い不快感が僕の中に残された。
今も複雑極まりない捨て去れない思考に戸惑うしかない。
「小田桐先輩。」
けれど、少しだけ彼女が笑う顔を見ると安堵する自分がいるのもまた事実に違いない。
その感情を受け入れるのもきっとまだ先であろう事も。
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