お前は知っていたのだろう、溺れかけた魚の様な呼吸を繰り返す私を。
『永久に眠れ』
あの時あの想いに気付いていたとしたら、彼は私をみてくれたのだろうか。
私は暖かいベットの中でふと他愛もない事を考えていた。
そんな風に思ったのは、薄い月明りが射す闇夜の晩何故か眠れなかったからだった。
思い返せば、憧れに近い感情を抱いていたのかもしれない。
自由に笑い、怒り、喜びを表現できる彼に。自由にならない私とは全く真逆で。
羨ましかった。
実際、ペルソナ能力の成長も彼が一番著しく、チームのリーダー的存在だった。
私も明彦も背中を追い掛けるのが精一杯で。
だからこそだろうか。あの頃を懐かしく思うのは。
追いついたと思った。
女である私でも今度こそ役に立って、彼の足を引っ張る事はもうしまいと決めた。
なのに、必然だと思いたくも無い偶然の事故に未来は阻まれた。
まさか一番の使い手である彼のペルソナが暴走するなんて、誰が想像出来ただろう。
あの夜に何もかも奪われた彼を、救う術など私達は持ち合わせているはずもなく。
あの日から私たちが入り込む事すら許されない罪に、お前は悩まされ続けたに違いない。
救う術が無くとも共に背負ってやりたかったと思うのは傲慢かな。
もうお前はこの世界を去っていったけど、これだけは本当なんだって言っておきたかった。
だから、せめて安らかな眠りがお前に訪れることを私はここで願っていようと思うから。
どうかそんな私がいる事を忘れないでいてくれないか。
きっとこの声はもう届いていないけれど。