頬を掠める指。


「お帰り。」
「ただ今戻りました。いい子にしてましたか?チドリ。」
「うん。とても退屈だったけど平気。」
「あ〜……肩凝ったわ。チドリ、湯沸かしてあるか?」
「……さっき沸かした。」
「よっしゃ、一番に入れさしてもらうわ。」
「ただ熱いかもしれないから。」
「ええて、冷ますから平気や。」
「私は熱めで予約します。」
「……熱いのが良いのに。」
「わしにどないしろちゅうねん。」

「私が先に入って良い?タカヤはその次で。」
「えぇ、その方が助かります。」
「……好きにせぇ。」
「形無しですね、ジン。」
「何も言わんで下さい。余計空しくなります。」

「はあ……依頼こなすのも楽やないわなー。じゃんじゃん来るのは商売繁盛な証拠やけども、手が回らん。」
「ええ。少しばかり疲れました、誰かの復讐を手伝うというのも。……最も私たちが望んだ事ですが。」
「そやなぁ。ただちっと恨まれるのはいつもわしらなのは、納得いかん。人間ちゅうのは醜いもんだと改めて思うわ。」
「そうかもしれませんね」

「お風呂、次良いよ。」
「では、次は私が。」

「ほっぺ。」
「あ?」
「怪我してる。」
「依頼ん時につけたか…?」
「……直す?」
「大した事はあらへん。擦り傷や。ほっとき。」
「そっちが良いなら、してあげるけど?」
「からかうな。冗談にしてはキツいで、ほんま。」
「だって嫌がらせだもの。」
「……そら、どうもありがとさん。」
「どういたしまして。」
「わしはちいとも感謝してへんからな。」
「……素直じゃないわね。」



ジンの声がこだましたのはその数秒後だった。

「仲の宜しいことです。」

 

 

 

戻る