『世界の果てを知る時』

 


ジンは怖がりだ。


おそらく出会った頃からそれは変わってはいない。
刹那的に生きる私は死ぬ事を恐れてなんかいないのに、生かそうとする。
あの施設にいた頃から世界への復讐を誓った私たちに甘ったるい優しさは必要なはずがない。
なのにあんたは失う瞬間を恐れて、それをいつも押しつけた。
要らない。面倒なだけよ、そんな感情は全て。

いつだかジンに「私達にそんな優しさなんか必要ない。」と言ったら、
「そら、お前さんらには無駄かもしれんな。」と既に諦めた返事をされた。
なんて意地の悪い。
あまりに予想していた答えではないのが余計に歯痒い。何で?とは結局聞かなかった。
何だかんだ言っても甘すぎるんだ、この男は。いつだって甘い。
いい加減気付いていたのなら、止めれば良かったのよ。

だから、今度も私を信じて裏切られると知っていて、こんな風にさせたんでしょ?
あんた達二人は。私には大事なものが出来て、二人には無いから欲しがった。
結果、私を失った。そんな子供じみた理由とその手で何を消そうとしていたの?

でも、これからは私を生かしたりしなくていいから。
せめて私の為に泣いてくれたらいい。
一粒の悲しみを落としてくれれば、それで良い。

 

今までのことは許してあげる。

三人で居れた日が急に懐かしくなって、眼を閉じた。刹那的でも空虚に包まれて
いたとしても、生きていたあの日は帰ってこない。だから、もうさよなら。
今度会うのは何時になるかも分からないから。



さよなら。


そして、世界は真っ暗になった。

 

 


 

 

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