その無邪気さが

 

 

 

思ってみれば、あれはあいつらに対しての俺の嫉妬なんだろうか。




「…なんともまあ、しばらく見ない内に綺麗になったねぇ……」
「誰が?」


俺の視線の先にいる訓練中のエリスを見てぼやいた。それが、一緒に見ていた隣のノウェに聞こえたらしい。

「エリスだよ。俺が長い遠征行ってる間随分美人になったんじゃないのか。」


ま、そこらの騎士団の男共にも負けないくらい強気な部分は前と全く変わってはいない。むしろ更に磨きがかかっている気もするが。

「そうか?まあ、エリスは元から顔が整っている方だと思うけど。」

そう評価するこのニブチンには俺が言った事がよく分かってないみたいだ。もどかしいやつめ。まだまだガキだなとうなだれつつ、これよがしとため息をつく。

「…はあ、エリスもこんな鈍感に…災難なもんだ。」
「なんだよ!ユーリック。誰が鈍感だよっ。」

俺のぼやきの半分も聞き取れなかったといったノウェが声を大にして言った。こんな小言にむきになるあたり子供らしさが滲みですぎだっての。思わず笑ってしまう。

「くっくっくっ…お子ちゃまなノウェはまだ知らなくていいってーの。」
「訳わかんないぞっ・・・俺はもうお子様じゃないって。」

微笑ましく思い軽く頭をなででやると、ノウェはむくれている。そう睨むな。どうしてこうもノウェもエリスも子供扱いされるのは嫌いなんだか。

ただこいつらの子供特有の無邪気さが、騎士団で過ごすのに慣れた俺にとっては新鮮でもあった訳で。どろどろに染まったずるい騎士団の大人達の様にはなるなよ、とは儚い夢とやらなんだろうかと柄にもなく思ってしまう。俺もそうとうこいつらに影響され過ぎだよなあ。

だから、そんなずるい大人達の一人に成り掛けてる俺はこう言ってやる。

「ノウェ、自分の守りたいものを忘れんなよ。」

意味が分からずとも、いつかその意味が理解できる日までこいつらを守るのが俺の役目なんだろう。その行いが俺をも救ってくれるのだろうか。無意味な問いかけは答える術を知らない。

 

 

 

 

 

 



そこはかとなくユリエリを匂わせてみたり。図としてはユーリック→エリス→ノウェな気がします。

 


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