花冠

 

 

「ユーリック、はい。」
「?」


目を丸くして少年は自分を呼んだ少女への方と振り向く。


「これ、あげますわ。」


そうして少年へと向き合った少女は自分で編み上げたらしい白い花の輪を、少年の頭に小さい手でそっと被せた。

「……ちょっと俺にはきついんでないの、エリス。」


照れ笑いをしながらも少し嬉しそうに、花の輪を手で確認しつつユーリックは言った。まさか大の男が花冠を少女にもらって嬉しいなどと誰にも言えないだろう、と心の中でこぼしながら。


「どういう意味ですか、それは。」


気に障ったのかその花の輪をあげたエリスが、厳しく怒りをあらわにした声で問う。エリスは内心かなり納得いかないといった表情で、頬膨らませその答えを待っている。それに気づいたらしく、ユーリックはしばらく間を空けたところで訳を話す。

「うーむ、そりゃあね……嬉しいけど、男の俺には似合わないって。」
「そんな事はないです。私が作ったんだから貴方にだって似合いますわ。」


即座にエリスはユーリックへ向けて自信満々に言い放った。


「う、言うなお嬢ちゃん。」


なんだって俺はエリスの根拠のない自信に弱いのだろうかとかユーリックはぶつくさ考えつつ、そのまままた何も言えなくなる。


「お礼は無いんですの?」


しびれを切らしたのかエリスが不服そうに言う。


「……コホン、お褒めにあずかり光栄です。有難く受け取らせていただきマス。」と言うと、上半身だけでおじぎの仕草をしてユーリックは渋々とお礼の言葉を述べる。


「分かれば良いんです。じゃあ、今度はあっちの赤い花で作りますから待ってて下さいね。」


そう言った途端、エリスは赤い絨毯の様な花畑へと駆けて行ってしまった。そんなエリスの様子を見てどうやらまだ満足してないらしいと、誰もいない花畑でユーリックは一人ため息をついた。

「はいはい、待ってますよー。」

少年はそう叫んでから、こんな風ではいつまで経ってもあの幼い少女に自分は敵わないのではないのかと思うのだった。

 

 

 

 

 




 

強気な幼い子エリスとそれに敵わないHETAREユーリックのやりとりに大変悶えます。びば、9歳差。

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