再会を果たすのは

 

 

 

 

 

 

夢を見た。

 

貴方の夢を。

 

もうこの世にはいないと思っていたのに。


それとも自分もこの世界とは別れを告げる予感がするからなのかしら。


貴方は暗闇の中で花に埋もれ、静かに横たわっていた。昔から貴方には何故か花が似合う。奇妙な感覚が私を支配する。あの時は数秒しか顔を見てなかったはず。なのに夢の中でもはっきりと貴方の顔は見て取れた。そこまで執着しているのでしょうか、私は。

「よう」

低く優しい声は傍で立っていた私に届く。ずっとその声が聞きたいと思っていた。まるで貴方そのものの様で安心して涙が出た。ぽろぽろ出る涙は会えなかった分流れるものなのかしら。私はすぐに顔を手で覆いながら、泣いた。誰かが動く気配がした。

 

 

――――――

 




夢を見た。

 

彼女の夢を。

 

もう会えるわけなんてないと思っていた。

 

俺は何故か花の中で埋もれてた。彼女は俺の側に何をするでも無く立っていた。相変わらず凛々しい瞳で、俺を貫く様に見ている。そんな彼女の輪郭は綺麗に浮かび上がっていて一瞬惚けてしまう。そこまで彼女に執着しているらしい、俺は。

「よう」

会って一言がこれだなんて、我ながら間が悪いと思った。するとどうだ彼女は泣き始めた。ぎょっとした。夢の中なのに随分と演出が良いもんだ。まるで彼女そのものの様だ。少し起き上がってもっと彼女の顔を近くで見ようと覗き込んだ。泣いていた彼女とふと視線が合った。

 

 

 



――――――

 

 




「ちみっこい時と変わらず泣き虫なもんだな、お嬢ちゃん。」
「うるさい、ですわっ…。これは貴方の為に泣いているわけではないのよ。」
「おおっ言うねえ。こんなにぼろぼろ泣いてるのになあ。」


夢の中にしてはやけにリアルで。彼女をからかってみたら、反応が帰って来た。ごしごしと手で涙を止めようとする気丈な彼女。ついでに夢であったとしても彼女の声が聞けて嬉しくなる。
あまりに彼女が無防備なのでつい俺の腕に納めてしまいたい衝動に襲われる。いつもなら規制が利くはずだが、今回は違ったらしい。彼女の方へと腕を伸ばす。


夢の中にしては貴方の感覚が近くて。からかわれるとつい反応してしまった。嬉しい様で懐かしくて、悔しいので意地を張ってみる。手で懸命にこすってみても、私の涙が止まる気配は一向に無い。絶対に貴方会えて泣いているのなんて言えないわね。頭の中で色々考えを巡らせていたら、私は貴方の腕に体ごと引っ張られる。


嬉しくてこれとないぐらいに抱きしめた。三年も会えなかったからな。

 


「私を窒息死にさせる気なのかしら、ユーリック。」


泣いて腫れたままの顔でお嬢ちゃんは笑って言う。そうして抱き締め返してくるもんだから、俺も泣きそうに嬉しくなった。彼女の肩に顔を伏せ、しばし感触を確かめた。


息も出来ないくらいきつく貴方は私を抱き竦めた。大きな腕で。私もお返しに貴方が苦しいだろうと思うくらいにぎゅっと抱きしめ返した。


「ってえ…!それは痛いぞ、エリス。」

 

貴方はそう変な声を上げて反応したけど、少しも腕の力を緩めてはくれなかった。またきつく抱きしめ返してきた。自然と私の涙は止まっていた。

 

 




「会えてよかった」

 

 



どちらの言葉だったのかしら。

 

 


どっちの言葉だったんだろうな。

 

 

 

 

 

 




  恥ずかし過ぎる乙女文。平行させるのって難しい。
ハッピーエンドなのかと思わず頭を傾げてしまいますが何はともあれ満足。

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