Aエンディング、女神になる事を選んだエリス。エリス独白。
ユリ←エリです。

 

 

 

 

 

 

温かい手

 

 

 

来て欲しくない瞬間ではあったけれど、後悔は別にない。
荒廃していても愛しい世界を繋ぎ止める封印の女神に私はなった。

今日も世界の為の祈りを捧げていた。痛みと使命が私を支配していたはず。
なのに、ふと今は亡き貴方の姿が頭に浮かんだ。
近くも遠くなってしまった鮮明に浮かぶ貴方の映像。

 

 

「エリス、泣くなよ…お前さんは強い騎士になるんだろ?」


(成れるものならなりたいですわ。)

 

 

「ほんとに苦しい時は誰かに言わないと、お嬢ちゃん保たないぜ。」


(貴方には言われずとも私は平気です。)

 

 

「必ず帰ってくるから…な?エリス、待っててくれよ。」


(うそ。帰って来てもすぐ次の遠征が行ってしまうのでしょう。)

 

 

 

いつもそんなやり取りで。泣く私の頭を撫でて、どこか矛盾ばかりの貴方の言葉が響き渡る。
私がいくつになっても変わらなかったやり取りを、何故今になって思い出すのだろうと、
ふっと笑いが零れた。とうの昔に忘れたと思っていたはずなのに。
いつもなら堪え難いオシルシの痛みが、少しだけ和らいだ。

貴方と私が生きていた時間は、もうほんの一瞬にしか過ぎない。

 

 

でも、でもね。これだけは確かに思うの、私。私達はあの時間を精一杯生きていた。
貴方の手が大好きで、いつからか私を撫でてはくれなくなったその手を恨めしく思ったりもした。
本当は貴方の手で撫でて貰える事が嬉しかった。私を認めてくれていた貴方だから。
そうして、あの時には気付けもしなかった想いがここにあって。

女神の私は、貴方が 生きた世界を守りたいと思うの。

 


泣き虫な私が世界を守る事の出来る女神だなんて、笑ってしまうでしょう?
事実、私はそれを光栄だと感じていた。
それは同時に普通の女性ではなくなり、愛する唯一の人の為生きてはいけなくなる事。
誰にも会えなくなる事。そうなる事など私知っていました。

 

今、貴方はどんな顔してどこに居るの?
あの日の様にわたしの事を笑って、頭を撫でてはくれないかしら。

今はどうにも伝える事はできないけれど。

 

私、貴方が大好きでした。

 

心から。

 

 

 

 

 

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