いたい
いたい
頭が割れそうな痛みに襲われている
苦痛で 涙で 視界が歪んでゆく
目を開いているのか 閉じているのか さえ まるで分からない
懐かしさ 愛しさ 哀しみ 切なさで死んでしまいそう
脳裏に映るのはわたしが知らないはずの誰かの映像
鮮烈なイメージがまばゆい白に包まれて途切れた後、
常闇が訪れた。
「おい、アーニャ!」
誰かがわたしを呼んだ。
知ってる。いつもわたしを呼ぶ声。明るいトーンで煩いほど。
「アーニャ…!」
二度目の呼びかけで瞼を開いた。白い光と
側には見慣れた金色の髪と蒼い目をもった人。
僅かにいつもと違ったのは笑い顔でなく、泣きそうな必死な顔をしていたこと。
おかしい。なんで酷く心配そうな表情をしているの?
「もう大丈夫、だよな?」
「……ジ……ノ?」
「今救護を頼んでるところだから、無理に動くなよ。」
「にん……む。」
「とっくに終わってるって。お前が動けない間大変だったんだから。」
耳に響く音程がとても懐かしい気がして、急速に広がった現実に脳が覚醒していく。
さっきのは夢じゃなかった
わたしのなかにわたしじゃない記憶が流れ込んできたせいで
どこか戻れなくなりそうで
どこか還ってしまいそうで
こわかった
世界にたったひとりきりでいた気がした。
そんなこと ある訳ないのに。
「アーニャ?――お前、やっぱり。どこかやられたんじゃ」
微かな不安が表に出ていたようで、ジノが顔色を探るように見回している。
わたしを気遣って、お腹をさすってまで。それはくすぐったいから止めて欲しい。
「なんともない。怪我を負わされるヘマなんて、してない……から。」
「そうか。アーニャはそうだった。」
「わたしのこと……ずっと呼んでた?」
「随分とな。聞こえてたなら返事くらいしろって、さっきまでスザクも呼んでいたんだぞ。」
「……そう」
横へ視線を逸らした途端、ゆっくりと身体を引き寄せられた。
広い逞しい胸でぼんやり息を吸って、吐く。
いくらか脈が速いジノの鼓動が聞こえた。心地よいリズムでわたしを安心させてくれる。
「本気で起きないかと思った。」
ジノは存在を確かめるように動けないわたしをぎゅっと抱きしめた。
母親に縋る子供みたい。
なんだか今日は酷く疲れた。すぐに気だるさが襲ってくる。
「ジノ」
少しこの腕のなかで眠っていてもいい?
--------------------------------
11話の補完話。ジノの存在で無意識に安心するアーニャ。