「スザク。」
「アーニャ、どうしたの?」
「少し質問。答えてくれる?」
「良いよ。僕で分かることなら」
「一緒に寝たりお風呂に入ったりするのは、家族だけ?」
「あ、うーん……家族だけって訳じゃないけど。どうしてそう聞くんだい?」
「ナナリーが言ってた。大切な人は血が繋がってなくても家族。」
「まあね。僕も小さい時は、仲良い友達とはそうしたから。それも血の繋がって無い家族みたいなものかな。」
「なら……ジノは家族?」
「え」
「だって、たまにお風呂入ったりする。寝るのも。」
「へぇー…………って!!!?ま、待って!アーニャ!」
「何?」
「それは相手がナナリーじゃなくてジノだと、すごく意味合いが違ってくるから!」
「いみあい?」
「異性の場合、恋仲というか……好きな人と……君がジノと付き合ってるかどうかなんて、知らないけどさ。」
「わたし、ジノといつでもどこでも一緒じゃない。そんなの疲れる。」
「そういう『付き合う』じゃなくて。なんて説明したらわかるかな。」
「……違った?」
「だって、嫌じゃないの?アーニャは。」
「ジノが、触って来るの慣れた。」
「いや、確実に慣れちゃまずいから。ジノ相手に、それは。」
「何故?ジノだとまずいこと?」
「…う。これ、僕が説明して良いものかもわかんないけどさ、あの。」
「ちょい待て、アーニャ!それは秘密だって言ったろう?」
「何で?」
「あのな、お前ちょっとは恥ずかしいとか女の子としてとか。とにかく、特にスザクなんかの前で言ったら――」
「特に何かな?ジノ。」
「やだなー、スザク。俺はやましいこと何一つしてないから!なっ!」
「ふーん。普段、ベタベタしてるのもどうかと思っていたけど。アーニャが何も知らないのをだしにセクハラまがいな事してたんだ、君は。」
「なあんか、すごく誤解してるだろ。」
「規範の乱れは良くないって知ってる?」
「ああ、勿論知ってるぞ!」
「そう?すごく、よく分かってない気がするよ。」
「ちゃんと分かってまーす。仮にスザクに同じ事したら俺、男としてどうよ?」
「それは、そうなんだけど。分かってるんだか、わかってないんだか……はぁ」
「そこでなんで溜め息つくんだ。」
「……あのさ、ジノ。」
「何だい?スザク。」
「僕は決心したよ。これは君達の為にも良くない。いますぐ変えるべきだ。」
「何をだ?」
「以後、アーニャに必要以上の接触はなしで。」
「あ、え、ちょっ……酷くないか、お前!」
「ちっとも酷くない。お風呂一緒に入るとか君達、子供じゃないんだから。」
「そんなおかしい事か!?これ!」
「おかしいよ。誰から見ても、だいぶ。」
「けど、アーニャと俺は仲間だぞ?話しかけるのに近寄らない訳にはいかないじゃないか。」
「僕が必要なことは君に伝えるし。それに触らなくても会話は出来るよ。一般論からしても。」
「うっ……いつも以上に鋭いな、スザク。」
「僕としては、むしろずっとそうして欲しいんだけど。君はどうもコミュニケーションしたがる人みたいだし?言っても無理だろ。」
「あーあー。そんな怖い顔すんなって!」
「睨んでないよ、別に。」
「わかった!アーニャには触んないで会話する。なるべくスザクに聞くよ!」
「その方向で次からは宜しく。僕は確かに聞いたからね。それじゃ、後で。」
「……りょうかーい」
「おつかれさま。」
「何時の間に。どこいってたんだよ?」
「後ろ。スザク怒ってた?」
「とんでもなくな。隠れてて正解だよ。おかげで俺は怒られたけど。」
「……今日、一緒に寝てもいい?」
「今の話聞いてなかったのか。」
「少しも聞かなかったことにする。それじゃ無理?」
「駄目だろうなあ。俺がスザクに殺される。」
「後でこっちに来ればいい。」
「え……良いのか?」
「いい。」
「や、でも。それで見つかったら俺、ホントに殺されるから。」
「ジノが何もしないければ平気。」
「そりゃあ、約束出来ない話だろ。アーニャ相手に。」
「それ…………ジノの『好き』?」
「そうかもしんない。触るの日課だし。「付き合う」っていうのがよく一緒に居る事なら、今そうなってるし。触っちゃいけない理由はわっかんないなあ。」
「わからない。ジノに触れられるの……嫌じゃないから」
「今の台詞」
「……?」
「あんま滅多に言うもんじゃないからな。」
「当たり前。いつも言わない」
「まあ、そこだけ分かってんならいいっか……。」
「約束。」
「おう。もう少ししたらいくから部屋で待ってろよ。」
「スザクとの約束、破ぶる?」
「スザクに禁止されたのは俺から必要以上に触らない事だろ?アーニャから必要とされた場合、とは言われてない。」
「ふうん。」
「しかし、我らがナイトオブセブン様は案の定真面目っ子だな。なぁ、アーニャ?」
「ん……」
「どした?」
「眠い。……疲れた。部屋まで運んで。」
「おいおい、お前運んでスザクに会ったら、今度こそどう説明するんだ?」
「わたしが眠いから……運んでもらった、ことにする。」
「ほー。シックス様は俺がセブン様に殺されても構いませんよとおっしゃられる。そいつは正直御免被りたいぞ。」
「そんな……こと、言ってない。」
「わかってるって、冗談だよ。まあ、アーニャの為なら俺、命掛けても良いと思ってるのは本当。」
「嘘。……私の為?何の冗談。」
「どうしてだ?」
「例えば、強い相手と戦闘」
「うん。」
「ジノが怪我する。」
「まあ、ないとも言い切れないな。」
「足も手も動かない。口も聞けなくなる。」
「あー……出来たら、そこまでなるのは回避したいけど。」
「そして…………命が尽きる、としたら?」
「お、おーい。アーニャさん?何もそこまで――」
「誰が。」
「あ。もしかして、すごく怒ってんの?」
「私の我が侭。……誰が聞いてくれるの?」
「お前は強いからどうにかなんだろよ。俺が言うのも何だけど。」
「どうしてそんな風に言えるの?」
「仮に俺がいなくなっても、スザクとか皆、いるだろ?」
「……。」
「そりゃ、すっぱり忘れろとは言わない。けど、その事で前に進めないってなるくらいなら」
「ジノがいい」
「へっ?」
「わたしは…………ジノがいい」
「ありがとうな。」
「ん」
「ごめん。とてつもなく意地悪い事言ったろ。」
「ジノの冗談きらい。笑えない。」
「うん……俺も嫌だわ。出来たら死ぬのは当分先が良いなぁ。よぼよぼのじいさんになるくらいまで。」
「おじいさん。何歳まで生きる予定?」
「んーと……軽く100歳、くらい?」
「なら、わたしもそこまで。」
「あはははっ!そしたら、アーニャはばあちゃんになるな!すっげぇ怖いばあさんになりそうだ。」
「何がおかしいの?ジノよりはわたしの方がきっとマシ。」
「そこまで言うか。ほらっ、寝るぞ!」
俺も 我が儘聞いてくれるのは、ずっとアーニャが良いよ。
―――――――
ジノとしては自分が好んで居るアーニャとそんな事しちゃいけないのか?というそこらへんの感覚が鈍ってるという話。アーニャを咎めたのはプライベートの事をおいそれと女の子が話したらまずいだろ、な意味合いです。スザクは真面目なので、異性で付き合う仲になるまでそういう事したら男として最低だと思ってます、多分。