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「アーニャさん。」
「……何?」
「あの、お味はどうですか?」
「おいしい。こんなの久し振りに食べた。」
「良かったです。お口に合って。」
「総督。」
「はい。なんでしょう?」
「何で、騎士の私と食事したいなんて言ったの?」
「ああ、それは……恥ずかしいことに、私一人で食事するのが寂しいのです。」
「どうして?」
「前は、お兄様や咲世子さん、学校の皆さんがいましたけど……こちらへ来てからは一人で食事を取ることが多くて。スザクさんもお忙しいでしょうし。」
「総督にはいつも誰かがついてる。一人なんて滅多にない。貴方が一人になれるとしたら……仕事がない時だけ。」
「えっと……アーニャさん。その総督と呼ぶのは辞めてもらえませんか?」
「駄目。私は騎士。貴方は皇女殿下。……馴々しくしたら、貴方が皇帝陛下にしかられる。」
「大丈夫、今はプライベートの時間ですから。それに初めてお会いした時、アーニャさんは言って下さいましたよね?」
「……。」
「下の名前で呼んでも良いと。そう言ってくださって、とても嬉しかったんです。」
「確かに言った。けど、それとこれは違う話。」
「私もそうした様にしたいのです。……駄目でしょうか?」
「それって、命令?」
「いえ、個人のお願いですから。嫌なら断ってくださって構いません。」
「わかった。プライベートはナナリーって呼ぶ。……仕事の時は無理だけど。」
「ありがとうございます。アーニャさん。」
「……どういたしまして。」
「アーニャさんは、好きな人はいらっしゃるのですか?」
「なんでそんなこと聞くの?」
「急にすみません。いたらそういったお話が出来るかと思って、聞いてみたのですが。」
「いない……と思う。」
「そうなんですか?」
「物心ついた頃には戦う事ばかり考えていた、から。人を好きになる感覚、あまり知らない。」
「そうですか……では、同じラウンズのスザクさんは嫌いですか?」
「ううん、スザクは面白い。アーサーによく噛み付かれてる。なのに可愛がる。で、また噛み付かれる。懲りない。」
「ふふ、スザクさんらしいです。アーサーはスザクさんを食べ物と間違えてるのかもですね。」
「アーサーはフワフワしてて可愛い。私の事優しく舐めてくれる。」
「なら、スザクさんとアーサーはアーニャさんの『好き』ですね。」
「……そういうもの?」
「ええ、そういうのが『好き』だと思うのです」
「そう。好きはそういうもの。」
「では、よくご一緒にいるジノさんはいかがですか?」
「いつも私やスザクを構う。……何が面白いかは知らない。」
「ジノさん、誰かと話すのが好きみたいですね。アーニャさんは苦手ですか?」
「違う。ジノはよくわからない。すごく強いのは知ってる。」
「好きかどうかわからない……ですか?」
「ラウンズで居るのが当たり前。だから、考えたことがない。私にないものを持ってる。見てて飽きない……気がするだけ。」
「それで十分『好き』に入りますよ、アーニャさん。」
「ナナリー。貴方の『好き』の判定甘い。」
「そうですか?」
「でも、貴方らしいとおもう。」
「えっ……、何だか、恥ずかしい事を言ってしまったみたいですね。」
「そんな恥ずかしがらなくてもいい。貴方、とても可愛いのに。」
「あ、あの。気さくて良い方ですよね、ジノさん。」
「そう?とてもおっせかい。」
「きっと、ジノさんはアーニャさんの『大切』なんですよね。家族みたいに。」
「かぞく――わたしとジノ、血の繋がりは無い。全くの他人。」
「血が繋がってなくても、大切なら家族だと思うのです。それだけずっと長い時間いらしゃったんですから。」
「ラウンズの仕事。気付いた時には一緒なのが多かった。」
「偶然なのもあるかもしれません。でも、そうではないような気がしませんか?」
「偶然か必然。貴方には分かるの?この世誰が、私の真実と言えるのかわからない。」
「あ……決め付けてすみません……むしろ、私がそう信じたかっただけですね。」
「貴方が謝ることない。」
「ありがとう、ございます……私も、お兄様とずっと一緒でしたから。」
「会いたい?」
「寂しくないって、言ったら嘘になります。だから今は、こうしてアーニャさんや皆さんとお会い出来てとても助かっています。」
「私たちと?」
「アーニャさんはどうですか?」
「貴方に会うとほっとする。何故かしらない。けど……わたしは嫌じゃない。」
「嬉しいです。私もアーニャさんと話すと楽しくて――」
コンコン
「あっ。はい、どうぞ。」
「失礼致します。」
「ジノさん、こんにちは。」
「ご機嫌麗しゅう、ナナリー総督。大変楽しそうなところ申し訳ございません。」
「いえ、こちらこそ。アーニャさんを勝手に連れ出してしまってすみません。」
「構いません。皇女殿下にお食事に誘って頂ける事、我がラウンズにとっても光栄です。」
「ジノ。」
「よ。アーニャ、時間だ。」
「つまんない。まだ居たかったのに……」
「そう睨むなって。上からお呼び出しがかかってちゃ仕方ないだろ。俺一人でやれっていうなら、やるけど?」
「面白くない冗談。ジノだけじゃ頼りない。私も行く。」
「おいおい、今日は随分だなー。何だよ?」
「教えない。」
「ふぅん、機嫌は良いみたいだな。総督は何かご存じですか?」
「いいえ、ごめんなさい。ジノさんには内緒です。」
「ははは、それは手厳しいことで。」
「仕事。早くしないと置いて行く。」
「俺が呼びに来たのにそれかよ……おい、アーニャ。ご挨拶は済ませたのか?」
「……まだしてない。」
「なら、ちゃんとした方が良いな。」
「ジノ、偉そう。」
「はいはい。早く言うなら言う。」
「そんな…!お急ぎなら良いのです。私の事は構わず行って下さい。」
「いえいえ、こいつちょっと礼儀知らずで……だっ!」
「ジノさん……?どうかしましたか?」
「…っ!!?くぅ~~ぅっっ…お、おま…お前なあ!」
「大袈裟。随分手加減してあげたのに。」
「はぁ!?アーニャ、今思いっきり踏んだろ!」
「一言多いのが悪い。絶対自業自得。」
「わかった、わかったよ。怒ったのはよ~くわかったから。ご挨拶。」
「わかってる。」
「ナナリー。私、任務に行ってくる。」
「アーニャさん、またこうしてご一緒出来ますよね?」
「今度はスザクも連れて来るから。」
「その時は是非、私も!」
「ジノは食事する時までうるさいから、いらない。」
「酷い言い草だねぇ。これでもマナーはわきまえてるって。親父がいないから多少は自由にしてたいけど。」
「ほんとうに貴族の息子?とてもだらしない。」
「おう!これでも貴族だ。」
「ふふっ。行ってらっしゃいませ、アーニャさん。ジノさん。」
「それでは、行って参ります。ナナリー総督。」
「……いってきます。」
「お二人ともお気をつけて。」
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アーニャとナナリーはお互いに優しさを分け合える関係を広げていってほしいと思うわけで。
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