いつから触れるのですら禁忌に感じられ、私達の関係は愛し合うとか到底それらの分類に当てはまることはない。
「契約違反ですよ。」
ほんの少しだけいつもより体温が高い。それはきっと今私に縋り付いている人の所為だ。目の前にはあの人の意外に広い胸が見える。 引き剥がすのは無理そうに思われるくらいに私は抱き締められている。
「……聞いてますか?ロイドさん。」
頭上に頭を寄せるその人からの返事はない。私はこうされる理由を探した。
触られている場所だけが酷く熱を帯びている感じがする。何故か部屋の中は寒いはずなのに。至って頭の片隅を整理し、冷静に事を思い返してみる。淹れたばかりの珈琲を持ってあの人が頭を突っ伏しているデスクへと私は近寄った。それは繰り返されてきたいつもの習慣。そこまでは良かった。違うのはその後だけ。この人に閉塞された空間で私はやんわりと捕まえられた。
「どうって事無いよね、君なら。」
「もう…自分の都合の良い様に解釈しないで下さい。」
何とも疲れ切った様な声でその人が応えた。
「寒くて仕方ない時にお堅い事言わないで欲しいなぁ。」
「違反は違反です。」
「だってさぁ〜この尋常じゃない寒さでそこに人が居たら、ついね。」
「なら、着込むか温かいものを飲んだりでもした方が……というか、理由になってないですよ。」
「あはは、そうだった?悪いねぇ。」
かけらも悪いだなんて思っていないでしょう。私の熱を奪うのをためらいもせず、その嘘にまみれた舌を首筋に這わす。
「私、単純なんです。勘違いしてしまいますから。」
誰も人を愛さない癖にずるいんです。前だけを見ている訳でもなく誰も映さない目はどの景色を捉えているのか私には想像も付かない。同じ場所に居るのに酷く遠いところに立っている感覚すらする。
「別にねぇ。こちらとしては支障も変化も無いし、止めといた方が君の為だよ。」
飄々とした口調で言われた取り付く島も無い言葉。止めなければいけないのはどちらなんですか。
「まぁ君以外にはこんな事しないけどね。」
ニンマリと笑った顔はとても満足そうで、私はこれで良いという錯覚を起こす。
ああ、こうして私はまた抜け出せなくなるんです。貴方という人から。
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